変額保険は、運用によって受け取る金額が変わる

保険契約者ごとに運用実績が異なる変額保険

変額保険とは、養老保険や終身保険といった保険のカテゴリではなく、運用の仕方の異なる保険のことをいいます。具体的には、保険と投資の両方の要素によって構成される商品です。そのため、運用実績が保険契約者ごとに異なります。

一般の保険商品は、保険契約者から支払われる保険料のうち、保険会社が運用部分を株式や債券などで責任もって運用。そこから契約者に対してあらかじめ定められた保険金や満期金、解約返戻金などを支払います。その運用は一般勘定といわれます。

一方、変額保険はその一般勘定を使いません。特定勘定として用意されたファンドについて、保険契約者がそれらを選択して運用。その成績によって保険金や解約返戻金の支払いが変動します。

特定勘定の中身は保険会社によって異なります。複数のファンドがあれば保険契約者が選択しますが、ファンドが1本だけという場合もあります。複数の場合、安定性を重視したもの(債権を主体に投資するフアンド)、収益を重視したもの(株式の組み入れ率が高いファンド)、海外での運用(単独、もしくはいくつかの国を組み合わせたファンド)など様々です。

保険料は予定利率を高く設定しているので保険料が割安になっています。運用実績によって変動するというと不安定な印象を受けますが、死亡保障だけを考えれば元本割れはありません。

商品としては、単独で終身型変額保険、年金型変額保険として販売する場合もあれば、年金払定期付積立型変額保険といわれる複合商品もあります。

変額保険は一般の保険商品に対応し、大きく分けて終身型、有期(養老)型、定期型、年金型などがあります。

(1)終身型

保険金は基本保険金と変動保険金があり、死亡時にそれらを受け取れます。基本保険金額は運用実績にかかわらず保証されています。たとえば、変動保険金がマイナスになったとしても基本保険金は受け取れます。ただし、解約返戻金に最低保証はありません。

(2)有期(養老)型

受け取る満期保険金額は資産運用の実績によって変動し、最低保証もありません。見込んだ運用実績を達成できなかった場合、基本保険金額を下回る場合もあります。ただし、死亡・高度障害時の保険金は最低保証されます。解約返戻金に最低保証はありません。

(3)定期型

死亡・高度障害時の保険金は最低保証され、さらに運用実績による変動保険金が支払われます。定期保険というのはもともと掛け捨てで保障部分のみの保険ですから、満期金はありません。

(4)個人年金型

運用実績に基づいて受取年金額や解約返戻金が増減します。有期型同様、受取年金額は最低保証がありません。

個人年金の変額タイプってどうなの?

老後の生活費を準備したい場合に

老後の生活保障のために加入を検討するのなら、個人年金保険です。個人年金保険は、生存保険の代表的な存在。保険料のほとんどが積み立てに回される貯蓄性の高い保険です。

ところが最近の個人年金保険は、超低金利の影響で予定利率(つまり貯蓄性)が下がり続けています。そのため定額型の個人年金保険では、金融商品として考えると、その貯蓄性には魅力がなくなってきているのです。

実際に最近の契約では、保証期間付終身年金保険に加入したとしても、保証期間の間に、支払った保険料を取り戻せるケースはほとんどないのが実情です。

保証期間を超えて、さらに5年くらい、中には7~8年程度は長生きした時点で、払った保険料ともらえる年金がようやく逆転するというのが、今加入できる個人年金保険の実力。そこで、これから加入するなら、おすすめしたいのが変額タイプの個人年金保険です。

変額タイプの個人年金保険というのは、変額保険と同じように、年金額が運用によって変動するタイプの保険のことです。変額年金保険を扱っている会社のほとんどが、投資信託のように、いくつかの選択肢の中から運用法を選べるようになっています。

つまり、保険料を払っている途中で運用状況を確認しながら、契約者の意思で運用方法を変更することもできるわけです。

市場の動向によって運用方法を途中で見直せるのですから、変額年金保険をこわい保険ととらえる必要はないでしょう。逆にいうと、今のような低金利時に生命保険で老後保障を確保したい場合は、多少のリスクは覚悟しても変額タイプの個人年金保険を選ぶしか、選択肢が残されていないといえるでしょう。

変額終身保険は生命保険と投資信託のどちらが主役?

加入者が亡くなったとき、あらかじめ決められた金額の死亡保険金が給付されるという点では、変額終身保険も通常の生命保険と変わりません。ただひとつ違うのは、通常であれば保険会社に運用を任せっきりにする保険料の投資先を、ある程度加入者自身が自由に選ぶことができる、というところです。

運用がうまくいけば、その分だけ給付される死亡保険金は増えていきます。だからといって、運用がうまくいかなくても契約時に決められた基本保険金は保証されているので、それで損をするということもありません。

では、いったい保険会社にとってどんなメリットがあるのでしょうか。じつは、運用でうまくいかなかったマイナス分は保険金ではなく、解約したさいの返戻金に反映されることになっているのです。したがって、運用がうまくいっていないタイミングで解約してしまうと、支払った保険料を下回る、いわゆる「元本割れ」の危険性も出てくるわけです。

この商品はもともと、日本ではバブル時代に大々的に販売されたものでした。当時は土地の高騰にしたがい相続税の負担も大きくなっていたので、その対象外となる枠が設けられている保険金を利用して、相続税対策に使おうという目的で売り出されていたのです。

さらに大きな利益を出すために、土地を担保にして銀行から高額な保険料を借り入れ、一括で支払うという形を取ることも多くありました。ところがご存知のとおり、間もなくバブルは崩壊してしまいます。そのため、元本割れで担保としていた住宅を失ってしまう加入者も次々と現れました。あげくのはてには、基本保険金を返済に充てるために自殺者が出るという社会問題になってしまったのです。

それを機に販売を取り止める保険会社も増え、現在ではおもに外資系の保険会社によって販売されています。かつての株式型、債券型、総合型に加え、海外への投資も含めてかなり選択肢は増えてきました。それでも、以前ほど株式や債権で利益を見込むことができないため、あまり加入者は増えていないようです。

こうして見ると、変額終身保険は保険というより、どちらかといえば投資信託をメインと考えたほうがよい商品といえるでしょう。もともと保険というのは、将来に対するリスクに備えるためのものです。それが運用の不安という現在のリスクを増やしてしまっては、あまり意味がありません。

運用先を保険会社に任せっきりにするのではなく、自分自身で決めたいという人には向いているタイプの保険といえるかもしれません。