低解約返戻金型終身保険は「ひらがな生保」にとってのセール品

保険を解約したら戻ってくる 『解約返戻金(へんれいきん)』

解約返戻金とは、保険契約を解約した時に戻ってくるお金です。

契約後、解約するまでに支払った保険料の総額に対する、解約返戻金の割合を「返戻率」といいます。

終身保険で保険料の払込期間を設定した場合は、被保険者の年齢にもよりますが、払い込みが満了した以降の返戻率が100%を超えるケースもあります

養老保険は、払込期間が満了した時点で、死亡保険金と同額の返戻金(満期保険金) が支払われます

養老保険で解約返戻金を受け取る3つの選択肢

  • ①保険期間中に死亡した場合に死亡保険金を受け取る
  • ②保険期間中に解約して解約返戻金を受け取る
  • ③保険料の払い込みを満了させて、満期返戻金を受け取る

解約返戻金が『多い保険』と『少ない保険』

▼解約返戻金が『多い保険』
終身保険

終身保険は一生涯保障が続く商品なので、一定の年数をかけていけば、解約返戻金はどんどん貯っていきます。

注意したいのは、終身保険でも特約で定期保険や医療保険が付加されたものは、解約返戻金がほとんどないケースもあります。

終身保険

保険料払込期間中に解約をすると、払込保険料の70割程度しか戻りません。払込期間が終了すると解約返戻金が払込保険料を上まってきます。

養老保険

養老保険は貯蓄型の商品です。保険期間内に死亡すると、死亡保険金が支払われ、保険期間が終了すると、死亡保険金同額の満期保険金が支払われます。

養老保険
▼解約返戻金が『少ない保険』
定期保険

いわゆる「掛け捨て」の定期保険には、一般的に解約返戻金はありません。商品によってあったとしてもごくわずかです。

定期保険

低解約返戻金型終身保険とは?

かつては生命保険会社は生命保険、損害保険会社は損害保険しか扱うことができなかったのですが、1996年の保険業法の改正により、子会社を作ることでおたがいにどちらの商品も販売することができるようになりました。

そのさい、損害保険会社の作った生命保険会社の多くが「東京海上あんしん生命保険株式会社」のようにひらがなをネーミングに含んでいたため、「ひらがな生保」と呼ばれるようになりました。

低解約返戻金型終身保険をおもに扱っているのは、この「ひらがな生保」の各社です。

終身型生命保険と違い、損害保険には基本的に更新があるので、つねに顧客を逃がさないようにする努力が必要になります。その点、低解約返戻金型終身保険なら長く加入者をつなぎ止めることができるうえに、たとえ途中で解約されても、返戻金が少ないので保険会社にとっては損失にはなりません。

もちろん、満期まで払い続ければ返戻金は普通の保険と変わらなくなってしまうので、保険料が安い分だけ保険会社にとってもリスクはあります。加入者としてもそれを分かっているので、なかなか途中で解約しようとはしないでしょう。

それでも保険会社にとってメリットがあるのは、この低解約返戻金型終身保険が「客寄せ」になるためです。

たとえば、スーパーマーッケトではとても利益にならないような大安売りのセールをよく行っていますよね。あれも、じつはセールで利益を出す気はなく、最初からお客さんにたくさん店に来てもらうことが目的となっているのです。つまり、低解約返戻金型終身保険で加入者を集めることで、ほかの損害保険もいっしょに契約してもらおうというのがひらがな生保の狙いなのです。

それも含め、あらかじめ何割かの途中解約は出るだろうと仮定することで、全体での利益を計っているわけです。

実際に、日本で初めての低解約返戻金型終身保険「長割り終身」を販売した東京海上日動あんしん生命は当時、はじめから解約を狙っているのではないかと、業界からはむしろ批判的にとらえられていました。

それでも、この戦略がうまく当たっため、最終的には他社もそれに倣うようになっていったのですが、現在では行き詰まりも目立つようになっています。結局、利益を出すにはほかの商品も契約してもらうことが前提であるにもかかわらず、セール品だけを買っていくお客さんが増えてしまったのです。

そのため、この先も低解約返戻金型終身保険が引き続き販売されていくかどうかは、かなり不透明になっています。ある意味、すでに契約している人はかなりお得な「買い物」をしたといえるでしょう。