医療保険の仕組み

保険は相互の助け合いのために生まれたもの

病気やケガをしたとき、保険という仕組みを使って治療費などの負担を減らしてくれるのが広い意味での医療保険です。「保険」というのは、多くの人に偶然起こるリスク(火災、自動車事故など)や、必ず起こるもののそれがいつかは分からないリスク(死亡など)について、多くの人が少しずつ負担し合って、お互い助け合う社会的な仕組みです。

そのため、保険料として支払ったものは個人のものではなく加入者全体の共通の財産となります。ここが貯蓄との大きな違いです。歴史上、現在のような保険の仕組みは、中世のイタリアで海上保険として発展し、その後フランスやイギリスへと伝わり、生命保険や火災保険ができていったとされます。

広い意味での医療保険は、病気やケガというリスクへの備えを、こうした保険の仕組みを利用して提供するものにほかなりません。広い意味での医療保険にはいろいろな分類の仕方がありますが、中でも最も重要なのは、運営主体による区分です。

ひとつは、国や地方自治体、あるいは健康保険組合など、法律に基づく公的な主体が運営する「公的」医療保険です。具体的には、「健康保険」(サラリーマンの人が加入)や「国民健康保険」(自営業の人などが加入)などがあります。

公的医療保険は、個人や企業が納める保険料、国の負担(税金)、病院など窓口で支払う自己負担金で成り立っており、また当然、営利を目的としていません。運営の無駄や制度としての硬直性などの問題もありますが、相互の助け合いという保険本来の趣旨からすれば、最も望ましいあり方といえるでしょう。

もうひとつは、生命保険会社や損害保険会社が販売している「民間」の医療保険です。こちらは、営利目的の事業として運営されていますが、民間ならではの創意工夫や市場ニーズへの迅速な対応などが期待できます。

なお、全労済やコープ共済など、特定の組合員が加入できる「共済」も民間の医療保険に分類されますが、こちらは営利目的ではありません。